「うちの会社でも、派遣社員や契約社員に比較対象労働者の待遇等に関する情報提供をしないといけないの?」「書き方が複雑そうで、間違えたらどうしよう…」そんなお悩みや疑問を抱えていませんか?2020年4月から始まった「同一労働同一賃金」のルールにより、企業には雇用形態に関わらず公正な待遇を確保する取り組みが求められています。その一環として、派遣労働者や有期雇用労働者に対し、比較対象となる正社員などの待遇情報を提供することが必要になりました。この記事では、制度の基本から具体的な記入例、注意点まで、分かりやすく解説します。この記事を読めば、情報提供の必要性や具体的な進め方が理解でき、自信を持って対応できるようになるでしょう。ぜひ最後までご覧いただき、適切な情報提供にお役立てください。
比較対象労働者の待遇等に関する情報提供の基本
まずは、なぜこの情報提供が必要なのか、誰に、いつ、何を、どのように提供すれば良いのか、そして対応を怠った場合のリスクについて確認しましょう。
なぜ必要?制度の目的と対象者
- 同一労働同一賃金の実現
- 不合理な待遇差の解消
- 派遣労働者・有期雇用労働者への説明責任
- 企業の規模に関わらず適用
この制度は、同じ仕事内容であれば雇用形態に関わらず均等・均衡な待遇を目指すものです。企業は派遣労働者や有期雇用労働者に対し、正社員との待遇差の内容や理由を説明する責任があります。
いつ、何を、どうやって提供する?
- 提供時期:雇入れ時、派遣時、労働者から求められた時
- 提供内容:職務内容、配置変更範囲、雇用形態、待遇(賃金、福利厚生等)
- 提供方法:書面の交付が原則(電子メール等も可)
情報提供は、労働契約締結前や派遣契約締結前に行う必要があります。 提供する情報は、比較対象となる労働者の職務内容や待遇の詳細です。書面での提供が基本となります。
情報提供をしない場合のリスクとは?
- 法律違反による指導・勧告
- 労働者とのトラブル発生
- 企業の社会的信用の低下
- 損害賠償請求の可能性
適切な情報提供を怠ると、法律に基づき行政からの指導や勧告を受ける可能性があります。また、労働者との信頼関係が悪化し、紛争に発展するリスクも否定できません。
【記入例】ケース別・比較対象労働者の待遇情報提供書の書き方
ここでは、具体的な職種を想定した記入例と、派遣労働者の場合の注意点を見ていきましょう。厚生労働省が提供している様式や記入例も参考にしてください。
[想定される職種A:事務職] の場合の記入例とポイント
- 比較対象労働者の選定理由の明記
- 基本給、諸手当、賞与の有無と内容
- 福利厚生(休暇制度、食堂利用など)
- 待遇決定における考慮事項
事務職の場合、比較対象者の選定理由を明確にし、給与だけでなく休暇制度や福利厚生施設利用の可否なども具体的に記載します。待遇の性質や目的も説明が必要です。
[想定される職種B:専門職(例:ITエンジニア)] の場合の記入例とポイント
- 職務内容・責任範囲の明確化
- スキル・経験に応じた待遇差の説明
- 教育訓練の機会提供の有無
- キャリアパスに関する情報
専門職では、職務の専門性や責任の程度を具体的に示します。スキルや経験年数による待遇の違いがある場合は、その根拠を合理的に説明することが重要です。
派遣労働者の場合の注意点と記入例
- 派遣先が派遣元へ情報提供
- 労使協定方式か派遣先均等・均衡方式か
- 教育訓練や福利厚生施設の利用機会
- 契約締結前の情報提供が必須
派遣労働者の場合、派遣先企業が派遣元企業へ情報提供する義務があります。 待遇決定方式(労使協定方式/派遣先均等・均衡方式)に応じた情報提供が必要です。 提供を怠ると派遣契約を締結できません。
トラブル回避!情報提供時の注意点とよくある質問
情報提供を行う際には、いくつか注意すべき点があります。また、疑問が生じやすいポイントについても解説します。
比較対象労働者がいない場合の対応方法
- 「仮想の労働者」を設定
- 職務内容が最も近い労働者を選定
- 合理的な待遇条件の設定
- 該当者がいない旨を説明
社内に比較対象となる正社員がいない場合でも、仮にその職務を正社員が担うとした場合の待遇(仮想の労働者)を設定して情報提供する必要があります。 どうしてもいない場合はその旨を説明します。
情報提供でよくある疑問点Q&A
- Q. どこまで詳細に書くべき? A. 待遇差の内容と理由が客観的に分かる程度
- Q. 待遇に変更があった場合は? A. 速やかに変更内容を再提供
- Q. 派遣社員の待遇は派遣先・派遣元どちらが決める? A. 派遣元が決定(派遣先からの情報に基づき)
- Q. 罰則はある? A. 直接的な罰則はないが、指導や勧告、損害賠償リスクあり
待遇差が合理的であることを説明できる詳細さが必要です。待遇変更時は迅速な再提供が求められます。 派遣社員の待遇決定責任は派遣元にありますが、派遣先の情報提供が不可欠です。
適切な情報提供のためのチェックリスト
- 比較対象労働者の選定は適切か?
- 提供すべき情報に漏れはないか?
- 待遇差がある場合、理由は合理的か?
- 提供方法は適切か(書面交付など)?
情報提供前には、対象者の選定、記載項目、待遇差の合理性、提供方法などを再確認しましょう。厚生労働省の様式やガイドラインも参考に、正確な情報提供を心がけてください。
まとめ:比較対象労働者の待遇等に関する情報提供の記入例とポイントを押さえて、適切な対応を
この記事では、比較対象労働者の待遇等に関する情報提供の基本から、具体的な記入例、注意点までを解説しました。重要なのは、法律を遵守するだけでなく、働くすべての人が納得感を持って能力を発揮できる環境を整えることです。今回の情報が、皆さまの企業における適切な情報提供と、より良い職場環境づくりに繋がることを願っています。まずは自社の状況を確認し、必要な情報を整理することから始めてみましょう。不明な点があれば、厚生労働省の窓口や社会保険労務士などの専門家へ相談することも有効です。